タイトル厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「Menkes 病・occipital horn 症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発に関する研究」平成23-24年度 総合研究報告書

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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「Menkes 病・occipital horn 症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発に関する研究」平成23-24年度 総合研究報告書

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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「Menkes 病・occipital horn 症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発に関する研究」平成23-24年度 総合研究報告書

治療指針1.できるだけ早期にヒスチジン銅の皮下注射を開始する。治療開始が、生後2か月以降であれば、神経障害に効果がない(Class I, Level B)。2.ヒスチジン銅皮下注射の目安は、血清銅、セルロプラスミン値を基準範囲内に維持することである。通常は、銅として70~150μg/kg/回を、投与開始時には連日あるいは隔日皮下投与する。血清銅・セルロプラスミン値が基準値に達した後は、基準値を維持できるように週1~3回の投与へと調整する(Class IIa, Level B)。3.新生児期~2か月以内にヒスチジン銅治療を開始しても、発育・発達は全く正常ではないが、未治療患児に比較して著しく症状が軽い。軽度の発達遅延、筋力低下が認められる。また、軽度の骨粗鬆症、膀胱憩室、血管蛇行、繰り返す尿路感染症を発症する例が多い。症状の程度は、遺伝子変異部位や残存活性の程度によると思われる(Class I,Level B)。4.治療開始が2か月以降になると、神経障害、筋力低下、結合織異常は改善しない。頭髪異常や血清銅、セルロプラスミン値は改善する(Class I, Level B)。5.ヒスチジン銅皮下注射とジスルフィラム経口投与の併用療法が試みられている。モデルマウスでは脳の銅濃度・銅酵素活性の改善が報告されている。しかし、患者での効果は十分検証されていない(Class IIb, Level C)I.病態Menkes病は1962年に小児科医であるMenkesがX染色体劣性遺伝形式の発育不全、特徴的毛髪異常、脳変性を示す男子例を報告したことに始まる1)。1972年オーストラリアの小児科医であるDanksは銅欠乏の羊の体毛にヒントを得て、本症が銅の吸収障害による銅欠乏症状であることを明らかにした2)。銅は生体に不可欠な必須微量元素で、銅が欠乏すると銅酵素の活性が低下する。成人の銅の1日推奨量は0.9mgとされている3)。腸管から吸収された銅は肝臓に取り込まれ、肝臓からの銅の一部はセルロプラスミンとして血液中に分泌されるが、大部分は胆道へ排泄される。尿中への銅の排泄はごく少量である(50μg/日以下)。血液中では、血清銅の約90%はセルロプラスミン結合銅で、残りの約10%はアルブミンやアミノ酸と結合している(図1)。血清中の銅は様々な細胞に取り込まれ利用される。様々な細胞では、細胞膜に存在する銅輸送トランスポーターであるCTR1で細胞内に取り込まれる。サイトソルに取り込まれた銅は、COX1、CCC2、ATOX1 (HAH1)の銅シャペロンにより、それぞれミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼ、サイトソルのZn/Cuスーパーオキシドジスムターゼ( SOD)、ゴルジ体膜にあるATP7AまたはATP7Bに運ばれる(図2)。ATP7AとATP7Bは構造が非常に類似しており(図3)、サイトソルからゴルジ体への銅の輸送を司っているが、ATP7Bは肝細胞で作用しており、ATP7Aは肝細胞以外のほとんど全身の細胞で作用している。Menkes病(MD)およびoccipital horn症候群(OHS)はATP7Aの遺伝子異47