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副腎ホルモン産生異常をきたす代表的疾患

III.副腎酵素欠損症

副腎皮質では3種類のステロイドホルモン、塩類調節に重要な役割を果たす鉱質コルチコイド、生命維持、ストレス反応に重要な働きをする糖質コルチコイド、そして性発達に関係する副腎性アンドロゲン(性ステロイド)が生合成される。これらステロイドホルモンはLDL-コレステロールを原料として種々の酵素を介して作られる。副腎酵素欠損症は、このステロイドホルモンを作る過程に関与する酵素が先天的に欠損することで起こる疾患である。そのほとんどは先天性で、また遺伝性のものであるが、中に、酵素障害の程度が軽いもので幼児期から思春期年齢で発症をみるタイプで遅発型と称されるものもある。

ステロイドホルモンが作られる過程には五つのチトクローム酵素(P450)と3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの六つの酵素が関与している。したがって副腎酵素欠損症として七つの病気があることになる。このうち、特にコルチゾールができないことにより、下垂体から ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が過剰に分泌される結果副腎が過形成をきたすものを先天性副腎過形成症と呼んでいる。これにはリポイド過形成症、21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症、17α-水酸化酵素欠損症、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症の五つの病気がある。その他、鉱質コルチコイドができないもので、過剰なACTH分泌過剰をきたさないものとして18-ヒドロキシラーゼ欠損症、18-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症がある。遅発型を示すものは21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症でみられています。さらに最近では21水酸化酵素,17α水酸化酵素活性がともに低下し,骨奇形を伴う酵素欠損症が報告されている(P450 オキシドレダクターゼ欠損症)。

疫学

副腎酵素欠損症がどれだけ発症しているかは、現在わが国で新生児マススクリーニングが行われている21-水酸化酵素欠損症以外正確な頻度は解っていない。21-水酸化酵素欠損症が最も多く87.2%であり、リポイド過形成症が5.5%、17α-水酸化酵素欠損症が1.9%、11β-水酸化酵素欠損症が1.7%、3β-ヒドロキシステロイド脱水素欠損症が1.8%です。各病気の発症頻度には人種差がみられているが、リポイド過形成症、17α-水酸化酵素欠損症は他人種に比べ日本人において比較的多く発症することが知られている。P450 オキシドレダクターゼ欠損症の頻度はわかっていない。

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副腎ホルモン産生異常に関する調査研究