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副腎ホルモン産生異常をきたす代表的疾患

VI. 原発性アルドステロン症

副腎から自律的なアルドステロンの過剰産生が起こり、その結果、水・Na貯留による高血圧と低カリウム血症、代謝性アルカローシスなどの症状を呈する病態である。病型には、片側性のアルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma: APA) (狭義のConn症候群)と、両側性副腎過形成による特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism: IHA)、片側性副腎過形成などが多くを占める。典型例では、低カリウム血症やそれに伴う症状があるが、食塩バランスや薬物の影響により初診時に必ずしも低カリウム血症を示さない症例も多い。

疫学

平成22年度全国疫学調査では、5年間の推定患者数7487人と報告されているが、高血圧患者への本症スクリーニングが普及した結果、全高血圧症患者の5-10%程度とも推定されている。

病因

(1)アルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma: APA)、(2)両側副腎過形成(特発性アルドステロン症 idiopathic hyperaldosteronism: IHA)、(3)片側性副腎過形成 (primary adrenal hyperplasia: PAH)、(4)糖質コルチコイド反応性アルドステロン症(glucocorticoid-remediable aldosteronism: GRA)、(5)アルドステロン産生癌腫(aldosterone-producing carcinoma: APC)などがあり、(1)がもっとも多い。GRAではアルドステロン合成酵素とステロイド11β-水酸化酵素の2つの遺伝子が不均等交差によりキメラ遺伝子ができ、副腎過剰発現することによる発症することが明らかにされている。最近、家族性アルドステロン症および孤発性APA症例群の一部においてカリウムチャンネルの一種であるKir3.4をコードするKNCJ5のそれぞれゲノムレベル及び体細胞(腫瘍細胞)レベルにおける変異が同定されている。

症状

高血圧および低カリウム血症が典型例での症状である。低カリウム血症がある場合は、口渇、多尿、多飲、筋力低下、四肢麻痺などを示すことがあるが、低カリウム血症を呈するのはPAの約半数以下であるので、PAの診断における感度・特異度は低い。

治療

PAと確定診断された時は、手術を希望する場合は局在診断まで行い、片側副腎病変か否かを確定し、副腎摘出術を行う。また、局在診断の結果、両側副腎病変と判定された場合や全身状態から手術不能例では、薬物療法(アルドステロン受容体拮抗薬が第一選択で、降圧が不十分な場合カルシウム拮抗薬やACE阻害薬/ARBを併用し、さらに不十分であればサイアザイド系利尿薬あるいはループ利尿薬の併用を考慮)を行う。

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副腎ホルモン産生異常に関する調査研究