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副腎ホルモン産生異常をきたす代表的疾患

4. 11β一水酸化酵素欠損症

ステロイド合成酵素のP450cll(11β‐水酸化酵素)の先天的な障害により,ミネラルコルチコイドの過剰産生による高血圧と,アンドロゲンの過剰産生による男性化をきたす遺伝性疾患である。

疫学

本症は欧米での報告は比較的多いとされ,特にイスラエルでは先天性副腎過形成の5%を占めるが,我が国での頻度はCAH全体の1%前後である。

病因

ステロイド合成酵素のP450c11の先天的な障害による。常染色体性劣性遺伝性疾患であり,原因遺伝子のCYP11B1は第8染色体上に存在し,本症患者において種々の遺伝子変異が同定されている。P450c11の障害により11‐デオキシコルチコステロン(DOC)の過剰産生をきたし,高血圧が起こる。また副腎アンドロゲンの産生過剰により,男性では性早熟が,女性では男性化が認められる。

症状

1.主症状
(1)高血圧
DOC過剰産生による。若年高血圧として発見されることが多いが稀に認められない場合がある。 (2)男性化(女性)
副腎アンドロゲンの過剰産生により,生下時陰核肥大,陰唇陰嚢融合など外性器男性化を認め,生後も男性型体型,乳房発育不良,月経異常,多毛など男性化症状が進行する。 (3)性早熟(男性)
男児において性器肥大,陰毛出現などの性早熟を認める。

2.副症状
低身長(男女)
男女とも副腎アンドロゲンの過剰は早期身長発育を促すが,早期骨端線閉鎖により最終的には低身長となる。

診断

11-β水酸化酵素欠損症診断の手引き
臨床症状
主症状
1. 高血圧
DOC過剰産生による若年高血圧(注1)
2. 男性化(46, XX女性
生下時陰核肥大、陰唇陰嚢融合など外性器男性化。
出生後も男性型体型、乳房発育不良、多毛などの男性化症状の進行。
3. 性早熟(46, XY男性)
男児において性器肥大、陰毛出現などの性早熟。
副症状
低身長(男女とも)。
男女とも副腎アンドロゲンの過剰は早期身長発育を促すが,早期骨端線閉鎖により最終的には低身長をきたす。
参考検査所見
1.血漿ACTH高値
2.PRA低値
3.血清DOC、11-deoxycortisolの基礎値、負荷後ACTHの高値(注2)。
4.血清テストステロン高値、DHES(DHEA-S)高値
5.尿ステロイドプロフィルにおけるDOC・11-deoxycortisol代謝物高値(注3)。
染色体検査
遺伝子診断
P45011β遺伝子(CYP11B1)の異常
除外項目
・21-水酸化酵素欠損症
・17α-水酸化酵素欠損症
 
(注1) まれに高血圧が認められない症例が存在する。
(注2) 生後6ヶ月までは、免役化学的測定-直接法による血中ステロイドホルモン測定は診断に必ずしも有用ではない。測定に胎生皮質ステロイドの影響を受けるからである。
(注3) 国内ではガスクロマトグラフ質量分析−選択的イオンモニタリング法による尿ステロイドプロフィル(保険未収載)が可能であり、診断に有用である。
 
<診断基準>
除外項目を除外した上で、
・主症状のうち1, 2を認める場合は副症状、各種検査を参考にして診断する。
・主症状のうち1, 3を認める場合は副症状、各種検査を参考にして診断する。
・注1のように高血圧を認めない例では、主症状2または3, 副症状、各種検査を参考にして診断する。

治療

高血圧に対しては,ACTHの分泌亢進を抑制し,DOCの過剰分泌を抑制する目的で,デキサメタゾン又はヒドロコルチゾンなどの合成糖質コルチコイドの投与を行う。女性患者の外陰部の男性化については社会的性の尊重を基本とし,中間性の外陰部については必要に応じて形成外科的手術を行う。

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副腎ホルモン産生異常に関する調査研究